松代藩第六代藩主 真田幸弘(菊貫)の文藝

俳諧一枚摺

特徴

目的~非売品の配りもの~

俳諧一枚摺は、売品である錦絵とは異なり、俳人の仲間内で交換されたり配られたりする非売品である。そのため、歳旦の摺物をはじめ、春興や秋興、あるいは慶事や改号の披露、さらには亡人の追善など、挨拶や告知を目的として作成されたものが多い。

多種多様な内容

多くの場合は、句だけでなくカット風に画が加えられている。その画は、本格的な美しいものからごく簡略なものまでさまざまであり、その画者も俳人や文人などのいわば素人画家たちから、狩野派、江戸琳派、浮世絵師、四条派などの職業絵師たちまでいろいろである。
画題も名所旧跡、田園風景、日常の器物など多種多様。宗匠や個人が各自の趣味で作成しているので、型にとらわれず斬新なものもあり、デザイン的にみても興味深いものがある。

さまざまな様式

大きさは、奉書紙(いわゆる大奉書、縦約三九糎×横約五五糎)の全紙(浮世絵でいう大倍判)、その1/2(大判)、1/4(中判)、1/8(八ツ切判)、横に半裁したもの(長判)、横に1/4に裁ったもの、色紙大(角判)、葉書大、極小のものもある。
素材は、厚めの楮紙であるが、稀に皺を付けて縮緬紙にしたものもある。また、人に配るときには折り畳んで袋に入れることが多く、その袋にも題名を刷り込み、さらに宛名を書いた小さな紙片や熨斗を貼付することもあった。
また、書肆や彫師の名前が入ったものや印が押されているものもある。このことから、一枚摺が店頭での売物ではないが、顧客の注文に応じて書肆や彫師が作成に携わっていたことがわかる。